自分の背中

それはもっとも遠い場所

不妊治療の辛さを行動科学で分析する①

不妊治療は辛い、そして長い。

 

そもそも1回の治療が生理中から始まり、排卵を経て再度生理が来る(妊娠すれば生理がこない)までのほぼ1ヶ月である。

診療と排卵のタイミングが合わないとこの周期はお休みね、ということさえある。

また、生理中に内診を受ける必要もあるため、仕事などの状況によっては出血がひどい日でも医師に膣内を見せなければならない。

しかも内診の時は、もちろん大股開きの状態で医師の手元まで持ち上げられている。

不妊治療を女性医師がしてくれる病院を選べればよいが、そもそも地方都市だと病院自体が少なく、医師は選べない。

 

もちろん病院側も配慮してくれて、内診中の医師の顔を見なくて済む場合もあるし、病院の雰囲気にもリラックス感を感じられるような柔らかい照明やらが使われているところもある。

 

しかし、不妊治療の最も辛いところはすぐに結果が得られないことだろう。

 

生理中に内診うけようとホルモン剤飲もうと、それこそ体外受精しようと妊娠できないときはできない。

人口受精や体外受精ではセックスすることもないため、性的な満足を得るという体験さえない。

にもかかわらず、莫大な費用(体外受精自由診療のため助成があるとはいえ、50万円くらいかかる)

つまり妊娠、出産という遥か先の人参を手に入れるために(もしかしたら手に入らないかもしれない)苦痛に満ちた治療を行わなければならない。

 

診療の方法など患者自身が変えられない部分は難しいが、患者自身が工夫することで不妊治療の辛さを緩和できれば少しでも不妊治療を継続することに役立つのではないか。

 

そこで、今回行動科学の視点から不妊治療の辛さを緩和する方法を検討してみようと思う。

 

そもそも人間(動物)の行動の仕組みとして行動を行なった直後の環境の変化によって行動が生じる頻度が増減する、という仕組みがある。

ちょっと難しいので簡単に説明すると

苦痛あり→ある特定の行動→苦痛なし

となるという体験をすると同じ状況になったときにある特定の行動をとる頻度が増える。

例えば

頭痛あり→頭痛薬をのむ→頭痛なし

だと、次にまた頭痛が生じたときに頭痛薬を飲む行動をとる頻度が増える。

別に頭痛薬を飲む、でなくても

頭痛あり→hiphopを踊る→頭痛なし

であれば頭痛が生じるとhiphopを踊る頻度は増える。

医学的になんの効果もないことでも、ある特定の行動をとった後に頭痛がなくなれば、次に同じ状況になったときにある特定の行動をとる頻度が増える。

では、以下の場合はどうだろう。

 

苦痛あり→ある特定の行動→苦痛あり

つまり、ある特定の行動をとっても環境の変化が起こらない、という状態である。

頭痛あり→頭痛薬を飲む→頭痛あり

で考えるとわかりやすいが、頭痛薬を飲んでも頭痛が治らない場合はどうするか。

もっと頭痛薬を飲む

頭痛薬を変える

病院を受診する

など様々な行動をとるだろう。

しかし頭痛薬を増やしても頭痛が治らないのであれば、その頭痛薬を飲むことをやめてしまうだろう。

これと同様のことが不妊治療においても起こることが予想される。 

 

妊娠なし→不妊治療を受ける→妊娠なし 

 

不妊治療を受けたとしても不快な状況に変化がない。

頭痛薬を増やしても頭痛が治らないとき、頭痛薬を飲むことをやめてしまうことと同じように不妊治療をしても妊娠に結びつかなければ治療を受けることをやめてしまうだろう。

しかも、不妊治療をすることで得られる快は妊娠のみである。つまり不妊治療を行うことは多くの不快を得てたった一つの快を得る(あるいは得られない)という行為であると考えられる。